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Apple Watchの心拍センサー — 光学式PPGの科学

緑色LEDと光電脈波法(PPG)でどうやって心拍数を測るのか

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リード

Apple Watchの裏面にある緑色のLEDが光る。これは「光電脈波法(PPG: Photoplethysmography)」という技術だ。光を使って心拍数を測る原理と、それを正確にするAppleのソフトウェア処理を解説する。

🟢 PPGの基本原理

血液は赤色光を吸収し、緑色光も吸収する。心拍のたびに動脈に血液が押し出され、皮膚下の血液量が変化する。

  1. 緑色LEDが皮膚に光を照射
  2. フォトダイオード(光センサー)が反射光量を計測
  3. 血液量の増減 → 光の吸収量変化 → 波形として検出
  4. この波形の周期 = 心拍数

シンプルに言えば「血液の流れを光で影として見ている」技術だ。

🔵 なぜ緑色LEDなのか

血液中のヘモグロビンは緑色光(約530nm)を特によく吸収する。

赤色光(医療用パルスオキシメーターで使用)より吸収率が高いため、手首のような動脈が深い部位でも十分な信号が得られる。

一方でSeries 4以降に追加された血中酸素濃度(SpO2)測定では赤色LEDと赤外線LEDを使用する。ヘモグロビンの酸素化状態によって光の吸収スペクトルが変わる性質を利用したものだ。

🔵 ノイズとの戦い

PPGの最大の課題はモーションアーティファクト(動きによるノイズ)だ。歩行・走行中に手首が揺れると、光学センサーが心拍以外の振動を拾う。

Appleは2つのアプローチでこれを解決している。

1. 加速度センサーとの融合

内蔵の加速度計が動きのパターンを記録し、ソフトウェアアルゴリズムで光学信号からモーション成分を差し引く。

2. LED点滅の最適化

LEDを常時点灯ではなく毎秒数百回点滅させ、環境光の影響を最小化する。差分信号だけを使うことでS/N比を改善。

🟣 電気心電図(ECG)との違い

Series 4以降に追加されたECG機能は、PPGとは全く異なる原理だ。

方式原理測定対象精度
PPG(光学)光の吸収変化心拍数、SpO2日常使用に十分
ECG(電気)心臓の電気信号心電図波形医療グレード相当

ECGはクラウン(竜頭)に触れることで手〜心臓〜手の電気信号ループを形成し、本格的な単極心電図を計測する。PPGでは見えない心房細動(AFib)の検出に有用だ。

まとめ

Apple Watchの心拍センサーは物理学・光学・信号処理の組み合わせだ。緑色LEDの選択は意図的なものであり、モーションアーティファクト除去はソフトウェアの質がハードウェアの限界を補っている例だ。ECGとの組み合わせにより、腕時計が本格的な心臓モニターに近づきつつある。