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Neural Engine完全解説 — A11からM4まで7世代の進化史

2017年の誕生から38TOPSへ。Appleが作り上げたAI専用シリコンの軌跡

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リード

2017年、AppleはA11 Bionicに人知れず「Neural Engine」を搭載した。その時点では誰も、それが7年後にオンデバイスAIの中心になるとは思っていなかった。

🟢 Neural Engineとは(改めて)

Neural Engine(NE)は、ニューラルネットワークの推論処理に特化した専用プロセッサだ。

機械学習の推論は、数十億回もの行列積算を繰り返す。CPUやGPUでも処理できるが、Neural Engineは同じ処理をはるかに少ない電力で実行できる。

TOPSとは: Tera Operations Per Second(1秒間に兆回の演算処理)の略。数字が大きいほどAI処理が速い。

🔵 7世代の進化を追う

第1世代: A11 Bionic(2017) — 0.6 TOPS

iPhone X搭載。Neural Engine初登場。Face IDのリアルタイム顔認証を実現するために設計された。2コア構成で、当時は「Siriを速くするため」とAppleは説明していた。

第2世代: A12 Bionic(2018) — 5 TOPS

iPhone XSシリーズ搭載。8コア構成に拡張し性能が8倍以上に跳ね上がる。このジャンプはAI活用の意志の表れだった。

第3世代: A13 Bionic(2019) — 6 TOPS

iPhone 11搭載。5nmではなく7nmで設計されながら効率を改善。撮影時のDeep Fusionなど、カメラ機能のAI強化に活用。

第4世代: A14 Bionic(2020) — 11 TOPS

iPhone 12搭載。TSMCの5nmプロセスを業界初採用。Neural Engineも16コアになり11TOPSに到達。M1チップにも同世代のNEが搭載された。

第5世代: A15/M2世代(2021〜2022) — 15.8 TOPS

A15はiPhone 13搭載。M2チップにも同等のNEが搭載された。Neural Engineコアは16コアのまま、効率と速度を改善。

第6世代: A17 Pro / M3世代(2023) — 18 TOPS

iPhone 15 Pro搭載のA17 Proは3nmプロセスでNEを刷新。M3にも同世代のNEが搭載。ハードウェアレイトレーシングなどGPU側の強化と並行して進化。

第7世代: A18 Pro / M4(2024) — 38 TOPS

iPhone 16 ProのA18 Pro、および2024年のM4チップに搭載。前世代比2倍以上という驚異的な跳躍。Apple Intelligenceの要件に応えるための意図的な強化。

🔵 7年間の成長グラフ

世代チップTOPS前世代比
2017A110.6
2018A125×8.3
2019A136×1.2
2020A1411×1.8
2022A15/M215.8×1.4
2023A17/M318×1.1
2024A18/M438×2.1

2017年から2024年の7年間で、63倍の進化を遂げた。

🟣 なぜ2024年に2倍のジャンプが必要だったのか

Apple Intelligenceが求めるのは、3〜7Bパラメータ規模のLLMをデバイス上でリアルタイム推論することだ。

各パラメータはFP16(16ビット浮動小数点)で保存されると、3BパラメータのモデルはメモリとNEの間に毎秒数百GBのデータを流す必要がある。

Neural Engineのアーキテクチャは行列積算に最適化されているため、この要求に対してGPUより桁違いに効率が高い。18TOPSでは「なんとか動く」レベルで、38TOPSは「快適に動く」レベルを実現する。

まとめ

Neural Engineは「AIブームに乗った後付け機能」ではない。2017年の誕生から一貫してAppleの製品体験を支えてきた、意図的に設計されたシリコンの歴史だ。A18 Pro / M4の38TOPSは、Apple Intelligenceという新しいステージへの準備が7年かけて完成したことを示している。